|
|
|
(16）イタプアン 〜その１〜
朝食を終えて、さて、そろそろ出かけようとしたら、ホテルのオーナー、フェルナンドさんの自家用車がホテルの前につけてあった。 ペロウリーニョの中心街は車両進入禁止地域で車は入れないのだが、フェルナンドさんは特別な許可証をもっているからホテルの真ん前まで 車で入ってこられるのだそうだ。 そして、なぜだか、タクシーの代わりにフェルナンドさんが空港まで私を送ってくれることになっていた。 車に乗ると、アンジェラや調理場の女の子たち、ホテルのみんなが見送ってくれた。 笑顔の優しいフェルナンドさんはインテリのポルトガル人だ。ホテル経営の前は、イタパリカ島でレストランをやっていたという。 今は、このホテルの他にも何軒かの宿泊施設を経営している。 「こっちのホテルはまだ始めてから２年で、もう少しがんばらないと・・」と空港に営業（パンフレットを置くために）に行くらしかった。 「オーナーの私が自ら空港まで送るなんて貴方はまるでVIPみたいですね。ここらのタクシードライバーは運転が荒いから、こっちの方がずっといいでしょう？」 本当にその通りだった。タクシーと違って、ジェントルマンの運転で快適ドライブである。 楽しい会話をしながら、空港に着き、フェルナンドさんとお別れする。 しかし、じつは私はこのまますぐにリオに帰るわけではないのだ。空港の近く、イタプアンに住んでいるミュージシャンに会うことになっている。 前日に電話したところ、朝なら都合がいいので、空港まで会いに来てくれるという。 それで、明日のリオ行き航空チケットをカウンターで購入してから（安い航空券は空港で買う必要があったのです。）その人の来るのをカフェで待つ。 到着したのは、ルイスさんというブラジル人ギタリストで友達の友達である。 坂本龍一やガル・コスタなどの演奏ツアーで日本にも来た事があるミュージシャンだ。 ところが、やってきたルイスさんの様子が普通ではない。 聞けば、何と、今朝、起きたら家に泥棒が入られたことに気づいたそうなのだ。 庭に置いてあったバイクなどを盗まれたのだとか。それで家では大変な騒ぎになっているらしい。 しかも、彼はレコーディングの真っ最中。そんな大変な中、空港に初対面の人物を迎えに行くという心境はどのようなものだろう。 ブラジルに雪があるわけがないが、まるで雪のように見える山に積もった白い砂を見ながら、私はルイスさんの車でイタプアンに向かう。 つづきを読む バックナンバー
（１）ショーロの家 |